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水戸地方裁判所 昭和46年(わ)222号 判決 1972年11月17日

本店所在地

茨城県古河市東四番地

有限会社小倉呉服店

右代表者代表取締役

小倉要蔵

本籍

茨城県古河市大字古河六、五九七番地

住居

同県同市大字東四番地

会社社長

小倉要蔵

大正二年一二月四日生

右両名に対する法人税法違反各被告事件につき、当裁判所は、検察官山田一夫出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社小倉呉服店を罰金八〇〇万円に、

被告人小倉要蔵を懲役六月に

各処する。

ただし、被告人小倉要蔵に対しては、この裁判の確定した日から二年間その刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、全部被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社小倉呉服店(以下、被告人会社という。)は、昭和二七年六月一四日設立、肩書所在地に本店をおく資本金二、〇〇〇万円の同族会社で、決算期を毎年五月三一日と定め、各種呉服・太物および洋品・雑貨等の買入、販売等を営業目的とするもの、被告人小倉要蔵は、被告人会社設立当初からその代表者代表取締役として、被告人会社の業務全般を掌理統轄していたものであるが、被告人小倉は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一、昭和四二年六月一日から昭和四三年五月三一日までの事業年度において、売上金等の一部を被告人会社の正規の帳簿に記載せずに除外し、これを架空名義や無記名の簿外預金とし、あるいは架空名義の有価証券取得にふりむけるなどして隠したうえ、被告人会社の実際所得金額が三五、三八九、五〇二円であつたのにかかわらず、昭和四三年七月三一日、所轄の境税務署(のちに古河税務署と名称変更。以下同じ)において、同税務署長に対し、所得金額が一一、〇一八、九五九円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額一二、〇〇〇、一〇〇円と右申告税額三、四八一、五〇〇円との差額八、五一八、六〇〇円をほ脱し、

第二、昭和四三年六月一日から昭和四四年五月三一日までの事業年度において、前記第一記載と同様の方法により売上金等の一部を隠したほか、さらに期末たな卸に際し商品の一部をたな卸資産から除外し、これを別途留保するなどして隠したうえ、被告人会社の実際所得金額が二九、五五七、七〇二円であつたのにかかわらず、昭和四四年七月三一日、所轄の境税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七、一三三、六九六円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額九、八七二、六〇〇円と右申告税額二、〇五二、七〇〇円との差額七、八一九、九〇〇円をほ脱し、

第三、昭和四四年六月一日から昭和四五年五月三一日までの事業年度において、前記第二記載と同様の方法により売上金等の一部および商品の一部を隠したうえ、被告人会社の実際所得金額が四六、六二六、七二二円であつたのにかかわらず、昭和四五年七月三一日、所轄の古川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二四、九〇〇、四二三円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額一六、四五四、七〇〇円と右申告税額八、四八一、〇〇〇円との差額七、九七三、七〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、第三回公判調書中の被告人会社代表者兼被告人小倉の供述記載部分

一、被告人小倉の大蔵事務官に対する各質問てん末書(ただし、昭和四五年一〇月一三日付、同月一五日付、同年一一月一八日付、同月二七日付、同月二八日付は、いずれも第二、第三の各事実。昭和四六年二月四日付は、第二の事実)および検察官に対する各供述調書

一、被告人小倉作成の答申告書(ただし、昭和四五年一二月二四日付。同年一一月二六日付は、第二、第三の各事実)

一、被告人小倉ほか一名作成の答申書(ただし、第二、第三の各事実)

一、小倉サクの大蔵事務官に対する各質問てん末書(ただし、昭和四五年一一月一三日付は、第三の事実。同月一七日付は、第二の事実)および検察官に対する各供述調書

一、金子七郎、中田但行、小倉郁雄(ただし、第二、第三の各事実)、小林幸雄(同事実)の大蔵事務官に対する各質問てん末書および検察官に対する各供述調書

一、遠藤幹児(ただし、第二、第三の事実)、青木猛(同事実)、小倉文子(同事実)、岩崎初枝の検察官に対する各供述調書

一、小林弘二の大蔵事務官に対する質問てん末書

一、有限会社小倉呉服店代表者作成の「提出書」と題する書面

一、小倉サク(ただし、判示第一、第二の事実)、佐藤育三、発生川光雄ほか一名、神崎倫一、小林弘二、佐藤進(ただし、第二、第三の各事実)、平野秀一郎(同事実)作成の各答申書

一、茨城県境県税事務署長作成の「証明書」と題する書面

一、国税査察官作成の法人税決議書(ただし、昭和四五年五月期分)

一、古河税務署長作成の各法人税修正確定申告書証明書

一、大蔵事務官作成の「常陽銀行古河店調査関係書類」、「足利銀行古河支店調査関係書類」、「預金利息の使途調査書類」(ただし、第一、第二の事実)、「有価証券確認書」、「有価証券、同売却損益、受取配当金、手数料調査表」、「各期末棚卸除外金額調査表」(ただし、第二、第三の各事実)と題する各書面

一、押収してある総勘定元帳一冊(昭和四七年押第四号の七、ただし、第二、第三の各事実)、棚卸表綴一冊(同押号の一一、同事実)、裏預金メモ綴九枚(同押号の二五)、仮名、無記名定期預金推移表四枚(同押号の二六)、計算表メモ一五枚、同一二枚、同五枚(同押号の二七の一ないし三、ただし、いずれも第二、第三の各事実)、納付書・領収証書四枚(同押号の二八)

判示第一の事実につき

一、古河税務署長作成の昭和四五年一一月一〇日付証明書(ただし、昭和四三年七月三一日提出の法人税確定申告書写添付のもの)

一、国税査察官作成の昭和四六年二月二六日付修正貸借対照表(ただし、昭和四三年五月三一日現在のもの)

一、大蔵事務官作成の昭和四六年二月二六日付脱税額計算書(ただし、自昭和四二年六月一日、至昭和四三年五月三一日のもの)

一、国税査察官作成の法人税決議書(ただし、昭和四二年五月期分)

一、押収してある総勘定元帳一冊(昭和四七年押第四号の一)、金銭出納帳四冊(同押号の二の一ないし四)、洋品部仕入帳一冊(同押号の三の一)、呉服部仕入帳一冊(同押号の三の二)、棚卸表綴二冊(同押号の四、五)、総勘定元帳一冊(同押号の六)

判示第二の事実につき

一、古河税務署長作成の昭和四五年一一月一〇日付証明書(ただし、昭和四四年七月三一日提出の法人税確定申告書写添付のもの)

一、国税査察官作成の昭和四六年二月二六日作成の修正貸借対照表(ただし、昭和四四年五月三一日現在のもの)

一、大蔵事務官作成の昭和四六年二月二六日付脱税額計算書(ただし、自昭和四三年六月一日、至昭和四四年五月三一日のもの)

一、吉岡幸夫、小林正作成の各供述書

一、大林治雄、瀬島敏之助、吉岡幸夫、益子広道、石戸照哉、荒川正耐、平林忠雄、仲山英夫、岡田光弘作成の各答申書

一、国税査察官作成の法人税決議書(ただし、昭和四三年五月期分)

一、押収してある金銭出納帳四冊(昭和四七年押第四号の八の一ないし四)、呉服仕入帳一冊(同押号の九)、洋品仕入帳一冊(同押号の一〇)、寝具部在庫表綴一冊(同押号の一二)、洋品在庫表綴一冊(同押号の一三)、子供服棚卸表一冊(同押号の一四)、呉服部在庫表綴一冊(同押号の一五)、ベビー・細貨・綿反・貯蔵品在庫表綴一冊(同押号の一六)

判示第三の事実につき

一、古河税務署長作成の昭和四五年一一月一〇日付証明書(ただし、同年七月三一日提出の法人税確定申告書写添付のもの)

一、国税査察官作成の昭和四六年二月二六日作成の修正貸借対照表(ただし、昭和四五年五月三一日現在のもの)

一、大蔵事務官作成の昭和四六年二月二六日付脱税額計算書(ただし、自昭和四四年六月一日、至昭和四五年五月三一日のもの)

一、加藤征男の大蔵事務官に対する質問てん末書および検察官に対する供述調書

一、佐藤進作成の供述書

一、荻沼政男作成の答申書

一、国税査察官作成の法人税決議書(ただし、昭和四四年五月期分)

一、押収してある総勘定元帳一冊(昭和四七年押第四号の一七)、金銭出納帳五冊(同押号の一八の一ないし五)、呉服部仕入帳一冊(同押号の一九)、洋品仕入帳一冊(同押号の二〇)、棚卸表綴一冊(同押号の二一)、ベビー用品・綿反・細貨・服地在庫表綴一冊(同押号の二二)、洋品在庫表綴一冊(同押号の二三)、呉服在庫表綴一冊(同押号の二四)

(法令の適用)

被告人小倉の判示第一ないし第三の各法人税ほ脱の所為は、いずれも法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、同被告人を懲役六月に処し、諸般の情状を考慮し、同被告人に対し同法第二五条第一項を適用して、この裁判の確定した日から二年間その刑の執行を猶予することとし、被告人会社については、被告人小倉の右犯行が被告人会社の代表者としてその業務に関してなされたものであるから、判示第一ないし第三の各事実につき、いずれも法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項第七四条第一項第二号を適用し、以上は刑法第四五条前段の併合罰であるから、同法第四八条第二項により所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人会社を罰金八〇〇万円に処し、訴訟費用については、刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条を適用して、全部これを被告人両名に連帯して負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金子仙太郎 裁判官 佐野精孝 裁判官 武田聿弘)

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